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【特集】 「ソロ男」、それは新しい鉱脈ターゲット。 博報堂「ソロ男」プロジェクトリーダー/荒川和久

もはやマイノリティとは言えない「ソロ男」ボリューム

「ソロ男」(独身の一人暮らし男性)というと、どんなイメージを持ちますか?
何の事前情報もなくそういう質問を投げかけると、大抵同じようなネガティブな答えが返ってきます。共通して言えることは、「結婚できない男」という部分にフォーカスが当たり、「孤独で可哀想な人」「家族を養える甲斐性のない人」というイメージが強いことです。特に、40~50代の独身男性に対してはかなり辛辣なものも多く見受けられました。これらは、先入観や偏見によるところも大きいのですが、一番の理由は、これまで独身男性についてあまり深く調べられたことがないということだと考えられます。

「消費は女性が動かす」とよく言われます。マーケティングの現場では、女性目線での商品開発のために女性だけのプロジェクトチームが組織されることも当たり前になっています。「おひとりさま」ブームに代表されるように、かつて男性が普通にやっていたことでも、女性が始めると世の中の話題となります。その一方で、男性はいつも蚊帳の外でした。
とはいえ、時代は大きく変わりつつあります。いつの間にか、独身男性は少数派と簡単に片づけられないボリュームに成長しているのです。しかも、それは若年層だけではなく、世代を超えて増え続けています。ちなみに全世帯に占める単身世帯率は、2010年で32.4%となっており、2030年には4割近くまで拡大すると予想されています。日本では、戦後から2000年頃まで「夫婦と子」からなる世帯が標準と言われてきましたが、もはや単身世帯の方こそがマジョリティとなりつつあるのです。

さらに、男性の生涯未婚率も将来的には3割近くまで拡大すると予想されています。3人に1人の男性は生涯独身のままの時代がやってくるのです。未婚だけではなく、晩婚化や離婚率の上昇なども勘案すると、男性が独身で活動する期間(ソロ活動期間)は従来より大きく拡大していると言わざるを得ません。
わかりやすい例で言えば、企業がよくターゲットとして想定するF1層(20~34歳の女性)の人数は約1090万人とされますが、20~50代の独身男性の数は、それを上回る約1400万人にも膨らんでいます。ちなみに20~50代の独身女性は1180万人であり、独身男性の方が200万人以上も多いことになります。(2010年総務省統計局「国勢調査人口等基本集計」より)

ソロ男は旺盛な消費意欲を持ち、実際に消費している

人数のボリュームが拡大し、活動する期間が長くなれば、そこに新たな消費のポテンシャルが生まれてきます。独身かつ一人暮らしで生きているからこその新しい需要や求められるサービスも必要となってきます。さらに、独身であるがゆえに、財布の紐も独身男性本人が握っています。既婚男性のように、購入する際に奥さんの顔色を伺い、了承を得る必要もないのです。そうした事情が独身男性の旺盛な消費力を動かしています。

それでも女性の方が消費している? いいえ、実はそんなことはありません。確かに、全体の消費性向で見ると女性の方が明らかに高くなっています。しかし、こと単身生活者の消費支出の実額で比較すると、単身女性より単身男性の方が月当たり1万円以上消費支出額は高くなっています。(2013年総務省統計局「家計調査・単身世帯・勤労者、一人一ヶ月当たり」より)
加えて、20~50代に関しては、単身男性の方が圧倒的に人口が多いことから、平均消費支出と単身生活者人口を掛け合わせた消費市場ボリュームで比較すると、20~50代単身女性が年間8兆円に対して、20~50代単身男性は年間14兆円規模にもなります*。
(*2010国勢調査による単身世帯年齢別人口分布に、2009全国消費実態調査による年齢別消費支出額を掛け合わせて合算した推計値。男女とも20~50代の単身世帯のみを抽出)

ソロ男は動かしにくい?

それにも関わらず、企業が独身男性をターゲットにしない理由はなんでしょうか。それは、「ソロ男」の性格とも関連することです。彼らは概して自分の主義主張を明確に持ち、何かに強いこだわりを持っています。反面、頑固であまのじゃくでへそ曲がりという性格も見られます。特に、企業側の売らんかなの姿勢を見透かし、乗せられないように動く傾向が強いのが特徴です。つまり、「広告などマスマーケティングが効かない層だから、ターゲットとして狙っても無駄である。だから今までどこの企業も相手にしなかった」というご指摘も頂きました。確かにその通りです。調査においてもその性質は明確に表れました。

「キャンペーンや景品は購買意欲に影響を与えるか?」という質問に対して、「ソロ男」の37.5%、実に4割近くが「影響されない」と回答しています。ソロ男でない人たち(以下、「非ソロ男」という)が23.8%であることから、14%もソロ男の方がその意識が高いことになります。(2014「ソロ男プロジェクト調査」より)
つまり、何かプロモーションなどの仕掛けをしても、「ソロ男」はそれに反応しにくいということ。それが本当なら、「ソロ男」は「マーケティングのターゲットにはならない。プロジェクトは終了」という話で終わってしまいます。

 ところが、プロモーション施策の具体例を提示して、各々に反応するかどうかを聞いてみたところ、意外な結果となりました。 「キャンペーンや景品に影響されない」「企業の販促に踊らされない」と言ってはいるものの、実際の行動としては思い切り影響を受けているのも「ソロ男」の方だったのです。全ての施策で「ソロ男」の方が「非ソロ男」を上回る結果となりました。特に「値引き」や「限定商品」などの仕掛けには滅法反応すると出ました。CМタレントや、有名人・権威団体のお墨付きにはあまり反応しませんが、反面ネットの評判は気にするという傾向も出ました。
「企業の販促には踊らされないと言う反面、値引きやクーポンなどに敏感に反応」という一見矛盾する意識と行動。実は、これこそが「ソロ男」に見られる典型的な行動のひとつでもあります。(=ソロ男の自己矛盾行動)
要するに、素直じゃなくひねくれている、まさにあまのじゃくの性格そのものということですが、以下にその具体的な行動例を少しご紹介します。

■結婚する気がないと言いながら、女性にモテたがる。
■他人を気にせず自由に生きたいと言いながら、他人の評価を気にする。
■ブランドスイッチなんかしないと言いながら、新商品が出るとまず買ってみる。
■長生きにはこだわらないと言いながら、健康食品が気になる。
■身近な人の推薦では買わないが、ネットで見ず知らずの人の評価を見て買ってしまう。
などなど…。

いかがでしょうか。当てはまるものがありましたでしょうか。
「博報堂ソロ男プロジェクト」では、単に消費の実態を調査するだけではなく、彼らの価値観や行動意識からインサイトを発見し、彼らを動かすツボを見つけて行きたいと考えています。「一度決めたブランドを継続して買い続ける」という一途な性質を持つ「ソロ男」は、息の長い優良顧客となり得る可能性をも秘めています。

ソロで活動する人たちが大勢いる社会に向けて

有史以来、人類は異性のパートナーと結びつき、家族という共同生活を営んできました。ところが、近年の急激な単身世帯数の世界的な増加は、消費の単位が「群」から「個」に移行していることを意味しています。それは、人々の生活意識のみならず、消費の行動も変える可能性があります。行動が変わるということはそこに新たなニーズも生まれてきます。今まで存在しなかった新業態が生まれる余地も出てくるでしょう。事実、大家族から核家族化に移行した1970年代日本にコンビニが出店され始めました。
高齢化、少子化という社会問題を勘案すれば、「ソロ男」が増加することが社会にとって望ましいことかどうかはわかりません。しかし、全世界的なこの傾向は、やがて社会の構造そのものを変えるかもしれないのです。

一人で活動する人たちが大勢いる社会には、今までにはなかった未来が待ち構えているはずです。マーケットのあり方も商品の売り方も買い方も、劇的に変わる可能性を秘めています。「ソロ男」が社会を変える、とまでは申しませんが、彼らに少しでも目を向けていただくきっかけとなれば幸いに思います。

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